2016年2月22日月曜日

<ケーススタディ>ANAのサービスはなぜ凄いのか(1)



年明けから東京で2週間程インターンをさせてもらうこととなった為、大晦日にニューヨークを経ち、機中で新年を迎えるANAのフライトに搭乗し、1月下旬に今度は同社の成田−ワシントンDC便でアメリカへ戻ってきた。前回・前々回と日本型組織とアメリカ型組織について触れ、「日本型組織とは、均質に能力と共通の問題意識の高い社員を集めることで、 特定の課題に対して戦闘力を最大限高めて一点突破しようとすることを狙った組織であると考えている」と述べた。今回はその日本型組織の良い例に出会ったのでそれを記す。


さて、ANAは言うまでも無く圧倒的なサービスクオリティで評判の航空会社であるが、国内だけでなく世界的にも極めて評価が高い 。具体的には、英国の航空・空港評価会社SKYTRAX社の顧客満足度格付に於いて、最高点である5ツ星に輝いている。この5ツ星が付いたのは調査対象全184社中キャセイ・パシフィック航空やシンガポール航空等わずか7社しか無く(2015年)、しかも、ANAは何とこれを3年連続で受賞している。

私自身、そのサービスの良さ故に移動の際にはなるべくANAを選ぶようにしてきていたし、周りを見ても、例えば元々北京首都空港で働いていた中国人の学校の同期が、渡米の際にANA便に乗るという目的の為だけにわざわざ北京から成田経由でニューヨークへ来たというような話もあった。

とは言え、今回の搭乗は年末年始。特に帰国便は大晦日発の元旦着だ。普通に考えると、大晦日・正月は誰もが休暇を取りたい時期と言うことで人件費に上昇圧力が掛かる一方で、わざわざこの日程で移動する乗客は少ない為、出勤職員数が抑えられ、サービスレベルもそれに応じて低下する。と言うことで、そこまで期待はしていなかった。(推測でしか無いが、ユナイテッド航空やアメリカン航空等米系キャリアはきっとサービスレベルを落としていただろう)

だが、その予想は完全に外れた。いつも通りの笑顔の接客や気配りのみならず、年が明けた瞬間に個人モニターに「A Happy New Year」のメッセージが映し出されてシャンパンが振る舞われたり、機内の随所が正月らしく獅子舞や雪の結晶等正月らしい折り紙で飾り付けされていたり、到着後の成田空港のゲートでは地上職員による何と晴れ着姿での出迎えがあったりと、この日程だからと妥協するのではなく、むしろこの日程だからこそできるサービスで迎え撃つという、全世界の他のどんな航空会社でも絶対に無いであろうレベルの高さを目の当たりにし、感動すら覚えた。

一体、どういう経緯で、どういう力学でこういうサービスが提供されているのだろうか。特に機内の飾り付けは、はっきり言って、あっても無くても気にする人もほとんどいないだろうし、利益に繋がるとは思えない。故に、合理性を重んじる米系であれば絶対にやらない。また、この飾り付けはどう見ても手製で、会社が全社一律で「やれ」と言っているようには見えなかった。きっと乗務員が自発的に作り、装飾したのだ。気になった為、実際に乗務員の方にどうしてそれをやることになったのかを聞いてみた。返ってきた返事は次のようなものだった。
「ええと…、これはニューヨークの地上職員がやってくれたのですけれど、私たちはこういうことをやってくれると、『こんなに良いことをやってくれた』って上に報告しているんですよね。そうすると、それをまたニューヨーク側が聞いて、喜んでまたやってくれるっていう、そんなサイクルなんです。」
つまり、
①社員が自発的にサービスの向上について考え実行
②社員間でフィードバック
③モチベーションが高まる
(→①に戻る)
という好循環が生まれているということだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿