2019年6月28日金曜日

B. League Management Cup 執筆記事 2. ―デジタルマーケティング― (2/2)


(本稿ではデロイト トーマツグループより2019/6/25に発行された「Bリーグ マネジメントカップ 2018」の中より、私が執筆した記事を転載します。著作権は同グループに帰属します)

COLUMN③

デジタルマーケティング (2/2)

今後の課題

 ここまで述べた通り、Bリーグのデジタルマーケティング戦略・施策は我が国のスポーツビジネス界において極めて革新的であり、既に多くの成果が挙がっています。ただし、Bリーグの挑戦はまだ始まったばかりであり、今後いかにファンを増やし、マネタイズに繋げていくかは引き続き課題であるといえるでしょう

 例えば、「スマホファースト戦略」について考えてみましょう。実際にどのような人々がスマホを活用したのでしょうか。Bリーグでは、当初コアファンほど多く活用し、ライトファンになるほど活用度が薄くなると仮説を立てていました。しかし、フタを開けてみると、大都市圏居住者ほど活用度が高く、地方へ行くほど活用度が低下するという「エリア軸」がより大きな影響を持っていることが分かったそうです。確かに、例えば東京であれば公共交通機関に乗ったり買い物をしたりする時など、スマホが生活必需品であることから比較的ユーザーに受け入れられやすい土壌があることが窺えます。しかし、Bクラブは大都市圏だけでなく全国にあります。故に、「スマホファースト戦略」の効果を一層引き出すためにはエリアに関わらず使ってもらえるようにすることが課題であるといえるかも知れません。仮に、デジタルツールが依然浸透・普及の途上にある地域に、Bクラブが核となって浸透・普及の波をもたらすことができたら、非常に大きな地域貢献になるものと考えられます。

 また、「カスタマイズ」も今後の一つの焦点です。MillennialsやGeneration Z等の若者へのマーケティングのキーワードが「カスタマイズ」であることは世界的な潮流です。例えば、全世界に1億人ものファンを擁する米NBAの人気クラブChicago Bullsではこの流れを汲み、ウェブサイトへの表示内容を顧客属性・行動履歴・選好等に応じて「カスタマイズ」する仕組みを導入しています。シカゴ在住の頻繁にアリーナへ来場する数万のファンと、域外・海外在住のその他数千万のTV観戦に興ずるファンとでは、クラブからオファーすべき内容が全く異なるからです。

 前述の通り、Bリーグでは顧客情報を一元収集・管理してきたほか、クラブウェブサイトデザインの統一を行う等、まずは標準化によるベースレベルの向上を図ってきました。これによりベースレベルが底上げされた暁には、次のステップとして「カスタマイズ」を通じたクラブ個々の稼ぐ力の発揮を促すことが求められることになると予想されます。
加えて、ここまでは全て「B2C」の議論をしてきましたが、「B2B」の視点も大切です。Bリーグだからこそ収集できる、全国津々浦々のバスケットボール関係者の属性・行動履歴等のデータは、企業にとっては自分達だけでは得難い金の卵であるといえます。今後は、これらを用いて企業の課題解決に役立てること、そしてリーグやクラブがマネタイズすることに繋げていけるかどうかが、Bリーグ発展の一つのマイルストーンとなると考えます。

(完)

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