2019年10月14日月曜日

ジャパニーズハロウィンの謎 若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?

マーケティングの恩師・一橋大学の松井剛先生松井ゼミの後輩達が出した"ジャパニーズハロウィンの謎 若者はなぜ渋谷だけで馬鹿騒ぎするのか?"を読了。
結論から言うと、贔屓目無しにめちゃくちゃ面白く、また極めて貴重な内容だと思った。

日本では、ハロウィンとはちょっと前までは特に存在感があるイベントではなかったのに、気づいたら何だか凄いことになっていたというのが多くの人の実感なのではないか。




実際、上の写真は2011年のハロウィンの時に私が渋谷スクランブル交差点前で撮った写真なのだが、今みたいに人で溢れておらず、仮装している人も少数ということが良く分かる。


一方、この写真は2018年のハロウィンでスクランブル交差点前で撮影した写真だ。このときはラッシュ時の東急田園都市線レベルの殺人的混雑ぶりで身に危険を覚えた程だった。ジャパニーズハロウィンはそれだけ急速に発達を遂げた訳だ。


本書ではハロウィンが今のような形になったプロセスを、そして今ハロウィンの大騒ぎの現場で何が起きているのかを、消費者行動論の観点から解き明かしている。

例えば、渋谷のハロウィンは単に騒ぐことを目的としている人が集まっている傾向がある。故に問題となった軽トラ事件のようなトラブルが起こる一方、地域にお金が落ちる訳でもなく(むしろ店を閉めるので機会損失が生まれる)、地域の人からも純粋にハロウィンを楽しみたいと思っている人々からも、白い目で見られており、持続性が疑問視されているのが実態であるという。

一方、渋谷以外にも、純粋にエンジョイしたい人々による"地味ハロ"や、コスプレイヤーによる"池袋ハロウィン"、ファミリーによる地域密着"カワサキハロウィン"等がある(川崎が地域密着というのは、川崎フロンターレを想起させ胸が熱くなる。そういう土地柄なのだろうか)。それらの参加者は、渋谷の参加者を"拒否集団"つまり一緒にして欲しくないと相手だと思っている。ハロウィンイベントに参加する人々の中にも複雑な関係や相互意識がある訳だ。


本書の内容で貴重だと思うのは、現場でのインタビューをベースにしていることだ。ゼミ生達がハロウィンのイベントの現場に飛び込み、果敢に意見を聴取してきている。上記の通り、身に危険を覚えるレベルの混雑のあった渋谷でのインタビューはさぞ大変だったことだろうと思う。それが故に、各地のハロウィンイベントに人々がどのような意識を持って参加しているのか、そして相互にどのような意識を抱いているのかというのがリアリティを持って捉えられる。ジャパニーズ・ハロウィンの進化の過程を、そしてその2018年時点の断面図を切り出した極めて貴重な研究であると言えるだろう。少なくとも私が知る限りでは、ジャパニーズ・ハロウィンの謎についてここまで深く解き明かした研究や書籍は存在しない。

一つ願望を述べるとすると渋谷ハロウィンについてもう少し知りたいということだろうか。地元商店会や他ハロウィンイベント参加者からは"バカ騒ぎをしたい人ばかり集まって迷惑千万"として捉えられている渋ハロだが、単に悪者として終わってしまって良いのか。今後の渋ハロの活路は無いのか、戦略的に活用する手立てはないのかということの示唆が得られると、ジャパニーズ・ハロウィンの今後の発展により繋がるものとなるのではないかな、と思った。もっとも、渋ハロ参加者へのインタビューは困難を極めたそうだ。あれだけの人混みの中で、且つウェイウェイすることを目的に来ている人々が、冷静に学生のインタビューになかなか応じてくれないというのもさもありなんという話だ。

いずれにしても、昨今のジャパニーズ・ハロウィン現象に関して好奇心を抱く人は必読の本だし、極めて貴重な研究であると思う。松井ゼミ15期生のみんな、これは本当にGreat Job!!

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