2015年12月26日土曜日

日本型組織・アメリカ型組織(1)

Wikipediaより
東証一部上場の伝統的日本企業で7年以上働いてきた経験からか、アメリカの企業文化に触れると、いつも組織形態・風土に於ける違いを強く感ずる。

私の働いてきた企業は、歴史の長い国内トップ不動産デベロッパーで、 
① 階級構造が極めてはっきりしている(つまり上下関係が厳しい)
② 多様性に欠ける
③ しかし社員が均質にかなりの実力を持っている
④ 団結力が強い
が組織の大きな特徴だと感じていた。
キャリアの半分弱を人事部で過ごしたこともあって良く組織を観察してきたので、この考えに誤りは無いと思っている。残念ながら他の日本企業を経験したことは無いので、他社についていい加減なことは言えないが、私のいた会社は概ね所謂「日本企業」の特徴を良く顕した会社なのではなかろうか。

私は、日本型組織とは、均質に能力と共通の問題意識の高い社員を集めることで、 特定の課題に対して戦闘力を最大限高めて一点突破しようとすることを狙った組織であると考えている。個々人の能力が高いから 、また問題意識も皆が共有しているから、特定の問題を解決するにあたって発揮される総体的な力が極めて強い。

このような背景を持つ日本型組織の好例は、MBA講義でも定番のトヨタであろう。トヨタの生産方式は効率性という一点に於いて芸術的とも言える水準を達成している。カンバン方式やアンドン等のシステムの設計も決定的な要素だが、それに従って動ける均等に優秀な労働者無くしてこれは実現し得ない。また、ANAのサービスなどもこれにあたるのではないか。定時運行はもちろん、顧客へのきめ細かな心配りや極めて高い安全性や快適さは単にトップの意識・能力だけが高いヒエラルキーの組織では達成し得ないだろう。両者共「生産効率性の追求」「顧客満足度最大化」という特定の問題に対し、非常に質の高い回答を出していると言える。


一方、アメリカ型組織はどうだろうか。色々な企業・組織に触れてきたが、アメリカ型組織とは、必ずしも個々人の能力や問題意識は高かったり共通だったりしないが、バラエティ溢れる人材を集めることで、様々な問題に対して解を出せる組織なのではないかと感じている。

例えば、先日、P&Gの大型プロジェクトに携わったマーケティングマネジャーが来校して講演を行った際、次のようなことを言っていた。「我々はプロフェッショナルではあるが、わからないこともたくさんある。例えば、我々が良く知らない新興国のマーケットに参入する時どうするか。自分たちで情報を集めるにも限界がある。だから、そこに詳しい人を雇い、意見を聞くのだ」
そこには、自分達の能力に対するある種の「諦め」がある。足りない部分を自覚し、素直に能力のある人に教えを請う、実に謙虚な姿勢と言える。

このような組織の良い例がGoogleだろう。元プロスポーツ選手から凄腕プログラマーまで、様々なバックグラウンドを持った人間を集め、有名な「20%ルール」等で可能な限り自由を与えて斬新なアイディアを引き出すことが徹底されている。結果、Google Map・Street ViewやGoogle Docs等、一見何の為にやるのかがわからない製品を次々と打ち出し、しかしそこから収益を見事に上げている。

(続く)

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