Court Gripという商品をご存知だろうか。私も全く知らなかったが、滑りやすいバスケットボールのコートに於いて、シューズのグリップを高め、選手のパフォーマンス向上や怪我防止に貢献する革新的な商品ということである。日本ではまだ販売されていないようだが、アメリカではNBAやNCAAの公認を受け、物凄い勢いで普及しつつあるようだ。
今日は、この商品の開発者Mark
French氏がイサカで講演会を開くということなので参加してきた。この講演会の情報自体、当日になってクラスの同期に教えてもらい、急遽参加することとしたので、本当に同期の協調性の高さには頭が下がる。
さて、その講演会。講演者Mark
French氏はコーネル大学と同じイサカにあるイサカカレッジ出身で、卒業後アメリカ3大ネットワークの1つNBCに勤務していたとのことだった。NBCではマーケティングに従事し、TV視聴者数が減少する中、如何にそれを増やすかという解決策を導く業務に当っていたそうだ。検討の結果、ニューヨークのタクシー内に設置されているディスプレイを筆頭に、家庭のTV以外での視聴を増やすことに焦点を定めて展開したそうで、今ではタクシー内での視聴者数が家庭TVでの視聴者数を上回る程になったとのことだった。
そのFrench氏だが、NBC勤務中に、バスケットボールコートが、選手達の汗や給水、そして休憩時間にチアリーダーやパフォーマー達がコート内に持ち込む埃等で、滑りやすくなりがちなことに気づく。コートが滑りやすいと、グリップが効かず選手のパフォーマンスに影響を与えるだけでなく、時に怪我を誘発することに繋がる。そこで、それを解決すべく開発したのが”Court Grip”だった。これは、シューズの裏にナノテクノロジーを活用したグリップ液を塗ることで、水や埃に負けないようシューズのグリップ性能を高めるという商品だ。
氏は、イサカカレッジやイサカ高校のバスケットボールチーム等で約2年間にも及ぶテストを経て、世にこれを送り込んだ。結果、評判が評判を呼び、今ではNBAやNCAAの公認を得、コービー・ブライアント等も愛用するビッグブランドに成長したとのことだった。また、この成長を通じ、著名なUnder Armor社から買収提案を受けたこともあったそうだ。
今回の講演を聴く限り、スリップを防止するという何とも基本的なことに対する対策が全く為されていなかったことに驚いた。実際、French氏に質問してみたが、「どこの企業も気づいていなかったので、真似されないよう、商品を送り込む前に特許を取得した」とのことだった。既存のバスケットボール用品業界では、シューズ自体のグリップ力向上
にフォーカスし過ぎた結果、どうやらシューズに「糊」を塗布することで性能を高めるというアイディアには至らなかったらしい。
過当競争が進んでいるように見える業界に於いても、実は誰も目を向けていないビジネスチャンスがあって、それはシンプルに考えることによって気づくことができるかも知れない。シューズのグリップ力を高めようと思ったら、靴裏に「糊を塗る」ことは、極めてシンプルで当たり前の発想に感ずる。ところが、皆、何がしかの先入観や思い込みがあったが故に、その当たり前を見逃していたのだろう。
French氏は現在、子供たちがゲームやインターネットを通じてあまりにも身体や頭を使わなくなってきていることを危惧して、とある新ビジネスの展開を考えているという。それは、子供たちが身体を動かすことでクリアできるゲームの開発とのことだ。例えば、従来のゲームではゲーム機を操作することによってのみ、敵を倒し、それによる達成感を得ることができていたが、それをゲーム機ではなく身体を動かすことによって得られるようにするそうだ。この為に、有名な「パワーレンジャー」の生みの親を招聘し、商品開発にあっているとのことだ。
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