2018年4月28日土曜日

<総括11>総括の総括(1)―MBAには意味があるのか―


MBA留学を検討されている方、そして受験中の方と話すと、「MBA留学をすると人生が変わる…!」あるいは「人生の成功者になれる…!」と非常に高い期待を持っておられると感ずる。
実際、人生は大きく変わると思う。ここまでで書いたように、考え方も変わるし、キャリアの幅も爆発的に広がる。だが、それが「成功」なのかと言うとそういう訳ではなく、「成功」する為の機会を得た、という形容が正しいと思う。身も蓋もないことを言うつもりは無いのだが、MBAを取っても、別に頭が良くなるわけではないし、経営全般の知識は付くものの、結局それを実社会で活かせなければ意味が無いし、時が経てば陳腐化するものもある。「MBA取得で起業も自由自在!」のようなイメージを持たれているケースもあるが、全くそんなことがあるはずもなく、起業して成功するにはビジネススクールで学べるものはあくまでも基礎でしかなく、その上に斬新なアイディア、明確なビジョン、確固たる意思、人間力、そして何より運と根性が必要になってくる。ビジネススクールはあくまで学校でしか無い。サッカーで無回転シュートを蹴る方法を頭で理解したところで、試合の動きの中で状況判断を的確に行いながら、実際に蹴ってゴールを決められるかどうか話は全く別なのだということと同じだと思う。

毎年150名前後しか米国トップスクール卒業生が輩出されない日本ではMBAホルダーは希少価値があるとみられるが、米国や欧州には本当に掃いて捨てるほどいるので、希少価値は全く無い。そもそも日本に於いても希少価値があるのは、大企業に於いてMBAを必要としていなかったが故にMBAを敢えて取得する物好きな人間があまり現れなかったということでしかないので、実際に取得したところで評価してくれるのは一部の新興企業と外資企業に限られる。だから、MBAを取っただけで得意になっているようでは本当にどうしようもない。結局、MBA取得を通じて得たものを活用しながら不断の努力を続け、さらには運も付いてきた時に、ようやく実績を残すことができ、初めて成功することができるということだ。故に、MBAに対して過度な期待を持つべきではない。MBA取得は通過点でしか無いのである。

ただ、かくいう私もMBA受験をしていた頃は、やたらと大きな期待を抱いていたことは否定できない。MBAを取ったらきっと自分も凄い人間になっているのではないか、果たしてその先にはどんな世界が広がっているのだろうかと極めて楽観的にワクワクしていた。そのような自分だったからこそ、出願1年目の時にやたらと夢物語をエッセイに書いて、出願全校全滅したのだろう。今になって、アドミッションが”Why MBA?” “Why this school?” ”What is your short-term goal and long-term goal?” をはじめとするエッセイの問に対し、なぜ地に足の着いた回答を求めていたのかが良く理解できるのだ。

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