2019年1月13日日曜日

平成の終わりにスポーツビジネスを考える: ③商業化

Source: Howmuch.net

商業化(≒お金を稼ぐこと)は必ずしもmustでは無いのだが、Jリーグのように、強化・普及・社会連携と言った理念を達成する為に商業化が必要であるケースは多い。どんな崇高な理念を掲げていても、お金が無いと何もできないからだ。
商業化は本邦のスポーツ界が最も先進諸国に遅れを取っているところと言える。何となく「スポーツを通じて利益を上げることは道徳的でない」と見做すような風潮すらある。しかし、そんな風潮はいよいよこの平成も終わろうとしている時代には捨て去らなくてはならない。価値のあるものには相応の対価が払われて然るべきだと思うのだ。

民間企業で働いてきた「外野」の立場でスポーツ組織を見て感ずるのが、お金を十分に稼げるポテンシャルがある一方で、それを活かして積極的に稼ごうとしているように見えないということだ。では、なぜ稼ごうとしていないのか。その大きな理由に次の二点が挙げられるのではないか。
  1.  行政等から 助成金が出る為、自前で稼ぐインセンティブが無い
  2. 「稼ぐ」為のビジネス人材が不足している
1については、東京2020後には同大会を目標に配られた手厚い助成金が削減されると言われており、助成金頼みの組織は危機に陥る可能性が出てくる。故に、スポーツ組織自らの「生存本能」から、インセンティブが生まれるものと期待しても良いかも知れない。もし、尚もインセンティブが高まらないスポーツ組織があったとしたら、淘汰されることになるだろう。


2の「ビジネス人材不足」については依然大きな課題だ。スポーツビジネスに意欲を持つい有能な人は私自身の周りを見渡しても実に多くいるが、大体待遇が低過ぎて入って来れない、或いは持続できずすぐ退出してしまう。

「ドリームジョブ」という言葉がスポーツビジネスの仕事を紹介する時に良く使われるが、正直言ってこれはかなり「やりがい搾取」に等しい。「夢を仕事にするんだから待遇は我慢しろ」という文脈で使われるからだ(もっとも、本来の意味は「努力次第でヒエラルキーを駆け上り、GMになってクラブを自分の思い通りに経営できる可能性がある」というまさにドリームを表したものであったそうだが)


これを乗り越える一つの手段として昨年表れた画期的な試みが副業人材の活用だ。画期的だと思う理由は、スポーツ組織・ビジネス人材の双方の懸念を解消できる仕組みだからだ。

まず、雇用する側のスポーツ組織の立場に立ってみると、普通の労働契約は極めてリスクが高い。日本の労働法は労働者側に極めて手厚く設計されており、もしミスマッチがあったとしても簡単に解雇することができない。だから、雇用することの意思決定のハードルが高くなる。また、そもそも高待遇を用意できるほどの資金力があるところも多くない。しかし、副業であれば正規雇用ではないので、そのようなリスクを回避しつつ、優秀な人材に働いてもらうことが可能だ。自分たちの組織で活躍してもらえそうな人材が見つかれば、その時点で正規雇用に踏み切れば良い。

一方、ビジネス人材側に立ってみても、いきなり今の仕事を辞めてスポーツビジネス界に飛び込むのはリスクが高い。優秀な人であればあるほど現業の待遇は良いだろうから、それを捨てて新しい世界(それも高待遇はあまり望めない世界)へ行くこととなるからだ。スポーツビジネスは「ドリームジョブ」とは言うものの、いくらなんでも夢の為に生活を犠牲にすることは相当な勇気と覚悟のある人でないとできない。だが、副業であれば現業を捨てずとも関わることができるし、自分が実際に活躍できるステージなのかを確かめることもできる。フィットを感じることができたならば、その時点でフルタイムでの入社を決めれば良い。

このようなスキームを、日本フェンシング協会とビズリーチが組んで始めた時は、企画の素晴らしさに思わず唸ってしまった。これに続き、全日本スキー連盟でも同様の募集を始めていたが、他組織にも大いに広がることだろう(ビズリーチの構想力すごい!)

今後の課題としては、スポーツ組織側としては凄腕人材が力を発揮できるような受入体制を整えることが挙げられるだろう。「外野が勝手なことを言うな」と進言を聞き入れない文化だったり、副業人材に相応の待遇も決裁権も与えられないような環境だったりすると、どんな優秀な人材であっても活躍できないし、優秀であればあるほどさっさと見切りをつけてしまうことになるであろうからだ。

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