2019年1月22日火曜日

平成の終わりにスポーツビジネスを考える: ④中長期展望

Source: The Guardian
中長期的視点で日本のスポーツ界を考えると、東京オリンピック・パラリンピックを境に、「淘汰」がキーワードになっていくのでは無いかと思う。


スポーツに限らず言えることだが、日本の国内市場環境はなかなかシビアで、2025年をピークに東京ですら人口減少フェーズに入る。即ちこれまで拡大してきた市場が縮小する。また、単に人口が減った分顧客数が減少するのではなく、老衰によって顧客母集団から離脱する人の分から顧客が減るので、人口減少スピード以上に早くパイは小さくなって行くだろう。これは、ファン・観客はもちろん、競技人口についても競技間・クラブチーム間での獲得競争が年々熾烈になっていくことを意味する。

また、競技やクラブチーム同士だけでなく、他のエンターテインメントやアクティビティも競争相手になるという点がこれをさらに複雑にする。イノベーションを通じて他のエンターテインメント等が魅力を高めている中、スポーツも負けず劣らず進化していかないと、パイを奪われかねない。例えば、東京・台場や豊洲で開催されている”Team Lab”はテクノロジーを駆使した革新的なエンターテインメントで大変な人気を博しているが、同様の進化を遂げたスポーツはあるだろうか。

このような状況を受け、先進的な競技団体やクラブチームでは、既に自分達の存在意義やスポーツそのものの価値を問い直し、自らの生存をかけて進むべき方向性を見出そうとしている。ファン・観客・競技者を含む人々にとって、スポーツをすることや自分達を応援することに一体どのような意味や価値があるのかという根本的な点を改めて理解し、提示することで、競争に打ち勝とうとしている訳である。

その一方、依然「目の前のことで一杯一杯で」とスポーツ業界に良くある状態から抜け出せずにいる組織が多くあることも事実だ。また、現在は過去の「レガシー」に乗っかる形で人気を維持できている組織や、行政からの助成金獲得でファン・観客数や競技人口の減少にも耐えている生き永らえている組織もある。しかし、そのような組織は、環境変化に適応できず競争に敗れる恐れがある。
2020年東京オリンピック・パラリンピックを目指して行政から競技団体に対して多額の助成金が出てきた訳だが、それも2020年が終われば縮減されると言われている。その時、果たしてどれだけの組織がサバイブすることができるのだろうか。

結局、スポーツと言えど普通の企業―と言うか生命共通の理に則り、進化論に帰結すると思う。やるべきことをやり、環境変化にも適応した組織が生き残る。それができないと淘汰される。市場の拡大や助成金という恵まれた外部環境のおかげである意味曖昧になってきた勝ち負けが、その両者の縮減という今後の劇的な環境変化を通じて明確になっていくのではないだろうか。

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