2026年3月26日木曜日

[駐在員のひとりごと] サッカー女子オーストラリア代表 Matildas について

 

サッカーAFC女子アジアカップ2026オーストラリア大会は決勝でオーストラリア代表 Matildas と日本代表 なでしこジャパン が激突し、タレントを揃えたなでしこが浜野まいか選手の見事なミドルシュートでの1点を守り切り、Matildasを下した。私も現地で観戦しており大変感銘を受けたのだが、その傍ら驚いたのが入場者数だ。公式発表では74,397人に上っており、これは大会新記録である。正直、ローカルクラブの試合等を観てきた者としては信じがたい。なぜ、これほどに観客が入ったのだろうか。

背景にあるのはMatildasの人気である。Matildasは単なるスポーツの代表チームという枠を超え、オーストラリアにおける女性のエンパワメントを象徴する存在としての地位を確立しているというのである。

エンパワメントを象徴とはどういうことか。オーストラリアではサッカーというものは男性のスポーツという固定観念があったという。ところが、Matildasは女子サッカーの国際舞台が増えるに沿って活躍のフィールドを拡大し、男子代表Socceroosを大きく上回る戦績を残すに至った。昨今レベル向上が著しい女子サッカー界において、強豪国に真っ向から勝負を挑んで結果を残している。そしてその中心にいるSam Kerr選手はイングランドのプロリーグWomen's Super Leagueにて選手の選ぶMVPに選出されるなど、大変な結果を残している。

文脈としては、なでしこジャパンの人気に対する我が国のものとも似ていると思う。ただ、コントラストが違う。我が国では男子日本代表も1998年のワールドカップ初出場、2002年日韓大会での躍進、中田英寿選手以来続く選手の欧州トップリーグ移籍と活躍という「対世界」という文脈で高く人気を集めていたので、なでしこの2011年ワールドカップ優勝や2012年ロンドン五輪銀メダルを始めとした快挙によって生じた社会的インパクトが、「対世界」という観点では必ずしも強くなかったと思う。この点、オーストラリアでは男子の「対世界」軸が希薄だった分、Matildasの活躍が「対男子」「対世界」双方で際立っており、人気を総なめしている。その人気は高く、 "I Can Be A Matilda"  という子供向けの絵本すら出ている。少女たちの憧れの存在になっているのだ。

さらに、サッカーという競技は、フーリガンやスタジアムで発煙筒を炊くサポーターに現れるように、欧州ではある種、大衆的であまり品が良くないスポーツだと思われている節もあるように思えるが、欧州から見て地球の裏側にあってガラパゴス化した豪州では、むしろこの競技は比較的新しく、フェアでおしゃれなスポーツとして捉えられている (実際、なでしことのアジアカップ決勝でも、出されたイエローカードはゼロであり、随所にフェアプレー精神を感ずるスポーツマンシップ溢れる試合だったと観客の立場としても感じている)。我が子を愛車のSUVなどでサッカー教室に送り届け応援する母親は "Soccer Mom" などと呼ばれ、教育熱心な母親の代名詞となっている。

もっとも、課題はなでしこと共通している。代表戦ともなれば多くの観客が集まるが、国内リーグについてはさっぱりというのが残念な実態だ。男子も女子もオーストラリアではリーグ戦の集客に大苦戦しており、この点は日本のJリーグのほうが安定した入場者数を確保できている (女子のWEリーグについては苦戦)。

代表チームの強化にあたっては、国内リーグの強化が欠かせない。代表のレギュラークラスになると欧州トップリーグの選手中心にはなるが、欧州リーグで戦えるだけの選手達を育成し排出するのは国内リーグだからだ。例えば、なでしこジャパンについては、主将の長谷川唯選手をはじめ、田中美南選手、植木理子選手、土方麻椰選手、藤野あおば選手、清水梨紗選手などの主力選手が国内リーグの日テレ・ベレーザ/メニーナ出身である (正直、日テレがイングランドリーグに参戦すれば無双できるのではないかと思ってしまう)。裾野が広くなければ代表チームも強くなり得ないのだ。

では、どうしたら国内リーグを強化できるのだろうか。鍵は「サッカー文化の浸透」だと思うがその点については書き始めると終わらないので、また別途記したいと思う。

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